伺かのこととか
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hope
おぞんさんところのSSに触発されたかも。
グロ…というほどのことはないけど、グロ苦手な人はとことん苦手なので一応微グロですよ、と。



「苺々ちゃん」
桃歌の声に苺々は目を覚ました。

彼女の裸の胸には、大きく苺々の名前が刻まれていた。
「ひっ!」
引き攣れた声が喉の奥から出てきた。
「桃歌どうしたのそれ!?」
その場所から一歩も離れられず、その白い四肢をさらす桃歌を見つめる。彼女は、微笑んでいた。いつもどおりの、全てをも包み込むような笑みで微笑んでいた。

「苺々ちゃん、見て。わたしのいちばん大切なところ、――心臓のある場所に、苺々ちゃんの名前を刻んだよ。」
桃歌は押し開くように、まだ血の滴る傷口を見せ付けた。傷口は破れて、更なる血を生み出す。
「ひやぁ! どうして!? どうしてそんな事をするの!?」
苺々は自らの体を抱き、嫌々をするように首を横に振った。
「……どうして?」
桃歌が変わらぬ口調で、静かに、穏やかに、不思議そうに問い返す。
「どうしてって、だって、苺々ちゃんが言った事じゃない。しるしが欲しいんでしょう? 二人がいつまでだって一緒にいられるっていう、しるしが」
ゆっくりと桃歌が苺々に歩み寄る。苺々の足は動かない。その分を声にして叫ぶ。
「だけどそんな、私は桃歌を傷つけるようなそんなことしたくなかった。やめて、やめて、桃歌」
「傷つけるような事をしたくなかった? 本当かな。」
桃歌がもう一歩苺々に近付く。そしてゆるりと左手の薬指を差し出した。その指は……爛れて腐った色をしている。そしてその指に光るのは。
「ゆび、わ」
苺々は震える唇で呟いた。
「そうだよ、苺々ちゃんがくれた指輪だよ。苺々ちゃんが私に嵌めてくれた指輪。これで一緒になれるって言ってくれたよね。痛かったよ。とても痛かった。でも幸せだったよ」
「ご、ごめんなさい」
「何を謝っているのかな? 他にも、ほらいっぱいあるよ。手錠、足枷。鎖、まだ苺々ちゃんと繋がっているね?」
桃歌がそういった途端、じゃらじゃらと金属音を立て、二人の手首を鎖が繋いだ。
「ひああっ!」
「うれしいね。しあわせだね。これでずっと一緒だよ。もう怖がらなくても、孤独な夜におびえなくてもいいの。私たちずっと一緒だよ。望むとおりになったね」
桃歌がどんどんと苺々に距離をつめてくる。あの、とろけさせるような、ミルクのような蜂蜜のような笑顔で苺々の正面へ。
「桃歌こんなのおかしいよ! 私が望んだのはこんな、こんな…っ。わたしは、あたしはただ、ただ!」
苺々はもはや赤子のように泣き叫んでいた。こんなはずではなかった。こんなはずでは。
桃歌はただにこにこと苺々に笑いかけている。幸せそうに。とてもしあわせそうに。
「うっく、違うの…とうか違うのぉ…そんなのじゃないの。私は桃歌を苦しめたくないの…!」
「くるしいなんて、いってないよお」
桃歌の胸からずるりと血の塊が落ちる。ずるずる赤に染まってゆく。
「ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
苺々は崩れ落ちた。



「ごめ…」
頬を涙がすうっと滑っていったとき、苺々は朝の陽に気付いた。――隣には安らいだ寝顔の桃歌。透き通った。その姿には傷はない。いつも通りの真っ白だ。
夢、だったのか。
汗の量が尋常ではない。未だに桃歌のあの姿が脳裏から離れない。
(私は、何を望んでいるんだろう)
桃歌とひとつになれたら、揺るがない証が何かひとつでもこの手にあれば、といつも想っていた。
(私は、何を望んでいるんだろう)
あれは。あれは私の願望だったのだろうか。あれが幸せなのだろうか。
「桃歌…」
出口がどこにあるのか分からない。どこへ向かえばいいのか、どこへたどり着くのか分からない。自分には何一つ分からない。
「未来がない」
苺々は両手で顔を覆って、声を押し殺して泣いた。
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