伺かのこととか
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SS「ツクツクホーシと影法師」
「ツクツクホーシと影法師」


「ねえ、ルゥ。ルゥの双子のお姉さんってどんな感じ?」
うさつむりが双子の部分を強調して言った。
「んー。いやに気にするなー。そんなに気になるのか」
隣に座るルゥがスイカの種を吐いた。からんとだらしない音を立てて、それはアルミバケツの底に消える。山田さんちの玄関先。殻を背負った一人と一匹がスイカにもしゃもしゃかぶりつく。ツクツクホーシがすぐそこの木で泣き始めた。小心者のふたりがビクリと身を震わせる。
「もう、ツクツクホーシか」
「うん」
暑い夏とも、もうすぐお別れなのかもしれない。二人にとっては3どめのお別れだ。
「で、ルゥの双子の姉さんってどんな感じなのさ?」
横で高音を発するウサギの耳つきかたつむりに、ルゥは頭を抱えた。
「姉は、姉だよ」
「わかんねー」
「なぜそう気になるのだ、姉が」
「違う!双子の姉!だって双子だよ!!?テレパス使ってよ!早く!」
「アホか」
ルゥが赤のなくなったスイカの半月を見つめ、次の瞬間うさつむりにそれを振り下ろした。びしり。
「ギャッ!……ルゥーーー!」
「くけけけけ」
「怖いよ! てかスイカきれいに食べすぎ! もう赤い部分ないじゃん!」
「いやー、きちょうなしげんはゆうこうにつかわないとねー」
「なぜ棒読み」

ツクツクホーシがジーという泣き声を最後に沈黙した。また時は静かに流れる。
「…姉は」
ルゥがぼそりと話し始めた。
「姉は昔からひょうひょうとしていて何を考えているのか分からない人だった。いつも一人で何かを決めて、いつも一人でどこかに行って、何かをしていた。ひょろりと現れたかと思うと何かをぽつりと告げて去っていくような、そんな人だった。だけど私は姉の考えてることとか、どうしたいと思ってるとか、何となく分かってたんだ」
「テレパス!!!」
「だまれ小童」
「……すみません」
うさつむりが食べ終わった小さなスイカの皮を目の前にぐにょりと耳を垂れた。
「だけどある時から少しずつ分かんなくなっていった。分かるんだけど、前みたいに全部って感じじゃなくなった。わたしと姉は行動が似てるから、同じことやるときが多いんだけど、わたしは姉みたいにうまくできなくてさ、くやしくてさ。……だからわたしは姉が旅に出たとき、自分も出ようって思ったのかもしれない。後を追いたいわけでは決してなかったけど、あいつのこと、ぜんぶ分からなくなっちゃうのは嫌だったし、あいつには負けたくなかったんだよね」
ルゥが彼女にしては珍しく続けざまに言葉を繋ぐ。うさつむりが一拍置いて呟いた。
「へ~。……そうだったんだね」
ルゥが白い指先で、ぽりぽりと頬をかいた。「それから……」
「姉は交渉術に長けててどんな状況でも人をうまく動かして乗り切っていた。あと姉はわたしよりまつげが1ミリ長くて背も1センチ高く、また姓名判断でも字画が優れており、そのすらりとした立ち振る舞いと怜悧な態度からクールビューティーと呼ばれていて、全てにおきカリスマ的存在で眉毛もよく動き…」
俯きぶつぶつと呟きながら語尾がだんだん怪しくなっていく相棒を見、うさつむりは戦慄した。
「ル、ルゥ!? なんかものすごくおかしいよ!?」
「お姉さま!お姉さま!お姉さま!ジーク、お姉さま!」
「ルゥーーーーーーーーーーッ!?!?」

と、その時、前方から何かがとてつもない速さで駆けてきた。

「あんた何してんだあーーーーーーーーーーーーー!!!!」

二人の前に立っていたのは、うさつむりのすぐ横にいたものと瓜二つのいきものだった。赤い顔でぜいぜいと呼吸を繰り返す目の前のかたつむり少女に、彼の横のかたつむり少女がゆるーりと片手を上げた。

「よー。ルゥー」
「よ、じゃない!おまえこんなところで何してるんだー!」
「すいか食べた」
「そういうことじゃない!」
「おまえ、すいか食べれなかった。まぬけ」
「っ、そうじゃない!! あんたまた私のふりして好き勝手やったね!?」

その場にぬるい空気が漂った。

「え?え?」
一人状況をつかめないうさつむりが、向かい合っている二人の少女を見比べる。一往復、二往復。と、その時、ぎりぎりと睨みを発していた方の少女がキッとこちらを向いた。
「ヒイッ!!」
「うさつむり! ばか!!」
その時全てがわかったような気がした。
「じ、じ、じゃあ、もしかしてこの人がルゥのお姉さん!?」
何を考えているのか全く読めないピンぼけ写真のような表情の、推定ルゥの姉に、うさつむりは詰め寄った。うつろな目で彼女がゆっくりとその口を開く。
「寄るな。このかたつむりが。キモイ。うせろ」
「ヒイイイイィッ!!」
うさつむりは3メートルぐらい後ずさった。ルゥと瓜二つの姿かたちをした、紛れもない彼女の双子の姉は、そのままゆらりと立ち上がると、彼女の片割れに向かい片眉を上げニヤリとほくそ笑む。
「じゃーーねーー」
「さ、さっさと帰れ! 塩まくぞ!」
ルゥが怒りをはらんですごむ。最も彼女の姉には全く効いてないようだが。ルゥはまだ荒い息のまま拳を握り締め、うさつむりはただただブルブルと震えながら、去ってゆくその少女を見つめる。

「……………」
「……………」
「……何で分からなかったんだよ」
「だ、だって。どう見てもあれはルゥだったって!」
「……眉毛の動き方、違う」
「…………。ああ、確かに、そうだったかも」
「うさつむりの、ばか」
「……えー」
「もう双子に憧れない?」
「………………うん」

ツクツクホーシがまた鳴き出した。小心者の二人はビクリと体を震わせる。気付けば空が夕焼けだ。吹く風も心なしか涼しい。こうして夏が少しずつ終わろうとしている。山田さんが引き戸を開けて顔を出した。何も知らない山田さんに、スイカのバケツを返して礼を言う。またおいでよ、と山田さんは優しく笑うと玄関をがらがらと閉めた。

「帰ろうか」
「うん」
「ところで、姉は何か言ってた? 訳のわかんないこと」
ルゥがうさつむりを肩の上に乗せた。それが彼のいつもの正位置だ。
「うーん。……聞かない方がいいと思うよ」
うさつむりの言葉にルゥが「あいつめ」と歯噛みした。
「でも。もしかすると、あれがお姉さんの気持ちだったのかもね」
「ん?」
「お姉さんとルゥ、同じこと思ってるんじゃないかなって」
「なんなのさ、それ。ありえない。何を言ったのか知らないけど私はあんなのと違う」
ルゥが拗ねて口を尖らす。思えば彼女のこんな表情を見るのは初めてだったかもしれない。
「……ところでルゥ、どうしてぼくらがここにいるって分かったの?」
「呼ばれてるよかんがした」
「!!やっぱテレパスじゃん!!」
「だまれなめくじ」
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